不正アクセスから資産を守る!マルチシグウォレットとは?仕組み・種類・選び方を徹底解説

不正アクセスから資産を守る!マルチシグウォレットとは?仕組み・種類・選び方を徹底解説

2025/02/04

1. マルチシグウォレットとは

1.1 マルチシグウォレットの定義

マルチシグウォレット(Multisignature Wallet)は、暗号資産(仮想通貨)の取引や資産管理を行う際に複数の秘密鍵で署名を必要とする電子ウォレットです。この仕組みにより、一つの秘密鍵を持つ従来のウォレットよりも高度なセキュリティを提供します。「マルチシグ」は「マルチシグネチャ」(複数署名)を略したもので、設定された署名者全員、またはその一部の承認がない限り取引が実行されない仕組みが特徴です。

例えば、「2-of-3マルチシグ設定」では、3つの秘密鍵のうち2つの署名が必要です。この技術は特に企業の資産管理や高額な個人資産の保護に利用されています。

1.2 マルチシグウォレットのメリット

メリット 説明
高いセキュリティ 複数署名を必要とするため、1つの秘密鍵を紛失しても資産が盗まれるリスクが低減されます。
内部不正の防止 企業や組織では、複数の署名者が必要なため、個人による不正な資金移動が防止されます。
分散型の管理 署名権限を複数人に分散することで、資産管理の透明性が向上します。

1.3 マルチシグウォレットのデメリット

デメリット 説明
設定の複雑さ 利用開始には技術的知識が必要になるケースがあり、初心者にはハードルが高い場合があります。
操作ミスのリスク 全ての署名者が正確に署名を行う必要があり、手続きに手間がかかります。
紛失時のアクセス困難 署名者の鍵を紛失すると、復元が困難になる場合があります。

マルチシグウォレットの利用にはメリットとデメリットの両方があります。利用を検討する際には、具体的な用途や必要性を十分に考慮することが重要です。

2. マルチシグウォレットの仕組み

マルチシグウォレットの仕組みを理解することは、仮想通貨の安全管理において非常に重要です。この技術は、強固なセキュリティを提供しながらも柔軟に複数の共同管理者がアクセスを行うための基盤を構築しています。以下では、マルチシグウォレットがどのように機能するかを詳しく説明します。

2.1 秘密鍵と公開鍵の関係性

マルチシグウォレットは基本的な暗号技術である「秘密鍵」と「公開鍵」を組み合わせて機能しています。仮想通貨業界では、公開鍵は他者と共有可能な情報ですが、秘密鍵はウォレットへのアクセスを制御する重要な情報です。

項目 説明
秘密鍵 ウォレットの所有権を証明し、トランザクションの承認を行うための暗号キー。
公開鍵 秘密鍵から生成され、取引先や外部に公開できる暗号キー。

マルチシグでは複数の秘密鍵が生成され、それに紐づけられる公開鍵の組み合わせによってウォレットが作られます。この仕組みを通してウォレットは、高度なセキュリティを提供します。

2.2 複数署名の承認プロセス

「マルチシグ」は「複数署名(Multi-Signature)」の略で、この承認プロセスがセキュリティの核心を形成しています。マルチシグウォレットでは、トランザクションを実行するために、複数の秘密鍵による承認が必要です。

たとえば、2-of-3マルチシグの場合、3つの秘密鍵のうち少なくとも2つがトランザクション承認に必要です。この方式は、資産管理者が複数いる場合や、1人が秘密鍵を紛失した場合でも、資産の安全性を損ねることなく運用することを可能にします。

2.2.1 承認プロセスの流れ

  1. 送金を依頼すると、トランザクションが生成されます。
  2. トランザクションは各署名者に送信され、それぞれが署名を付与します。
  3. 必要数の署名が取得されると、トランザクションはネットワーク上で検証され、最終的に実行されます。

このプロセスにより、不正アクセスや単一の秘密鍵に依存するリスクが大幅に低減されます。

2.3 トランザクションの実行

最終的に、トランザクションは一定数の署名が揃った時点でネットワークにブロードキャストされます。マルチシグウォレットでは、この手順が非常に厳密に設計されています。

段階 説明
署名収集 承認に必要な署名を全て収集します。
検証 ネットワークが署名の正当性を確認します。
実行 迅速にブロックチェーンに追加され、トランザクションが記録されます。

このように、マルチシグウォレットはセキュリティと管理のバランスを提供するツールとして機能しています。特に大規模な資産管理や複数人での資産運用が求められるシーンにおいて、必須の技術といえるでしょう。

3. マルチシグウォレットの種類

マルチシグウォレットは、その利用目的やニーズに応じて複数の種類が存在します。以下に、それぞれの種類について詳しく解説します。

3.1 ソフトウェアウォレット

ソフトウェアウォレットは、スマートフォンやパソコンにインストールして利用するタイプのマルチシグウォレットです。多くのビットコインウォレットや他の仮想通貨ウォレットがこの形式に対応しています。代表的なものには、ElectrumCopayなどがあります。

このタイプの特徴は、手軽に利用できる点とインターネットに接続されているためウォレットをオンラインで管理できる点です。しかし、セキュリティの観点から見ると、インターネット接続がある分、外部からの不正アクセスに対して脆弱性があります。

3.1.1 メリット

  • 簡単にインストールして使える
  • 多くの場合、無料で利用可能
  • 複数のプラットフォーム(スマホ、デスクトップなど)に対応

3.1.2 デメリット

  • ネットワークへの接続が必要なためハッキングのリスクが高い
  • デバイス故障やソフトウェアの問題でアクセス不能になる可能性

3.2 ハードウェアウォレット

ハードウェアウォレットは、専用の物理デバイスを利用して仮想通貨を安全に管理する方式です。TrezorやLedger Nano Xがよく知られたモデルとして挙げられます。このウォレットは通常、USBポートを通じてパソコンやスマートフォンに接続し、複数の署名を必要とするトランザクションを管理します。

オフライン環境で署名が完了するため、外部からの攻撃リスクが大幅に減少します。また、物理デバイス自体にPINコードや2段階認証を設定できる点も高いセキュリティを確保する要因です。

3.2.1 メリット

  • インターネット接続を完全に遮断できるため、安全性が高い
  • 耐久性が高くバックアップ機能も充実
  • 高額な資産を運用する際に最適

3.2.2 デメリット

  • デバイスの購入費用がかかる
  • 紛失や破損が発生した場合、復元が必要
  • 操作が初心者には難しく感じる場合がある

3.3 カストディアルウォレット

カストディアルウォレットは、第三者に資産を管理してもらうタイプのウォレットです。このタイプのマルチシグウォレットでは、取引所や専門企業が提供するプラットフォームを活用します。例えば、コインベースやバイナンスのような大手取引所がこれに該当します。

複数の署名者(通常は利用者と提供企業)が設定されており、強固なセキュリティ対策が施されています。ただし、資産の一部を他者に管理してもらう点で、リスクも伴うことを理解しておく必要があります。

3.3.1 メリット

  • プロフェッショナルによる高いセキュリティが期待できる
  • ユーザーが秘密鍵を管理する必要がない
  • トラブル時にサポートが受けられる

3.3.2 デメリット

  • 秘密鍵を完全に自分で管理できないため第三者依存が発生
  • 提供者が破産や規制の影響を受けた場合、アクセスが制限される
  • 取引所のハッキングリスクが依然として存在

以上のように、マルチシグウォレットにはソフトウェアウォレット、ハードウェアウォレット、カストディアルウォレットという異なるタイプがあり、それぞれ特徴や利用シーンが異なります。自分の目的や求めるセキュリティレベルに応じて最適なタイプを選びましょう。

4. マルチシグウォレットの選び方

マルチシグウォレットは、暗号資産(仮想通貨)を安全に管理するうえで非常に重要な選択肢の一つです。適切なウォレットを選ぶためには、いくつかの要素を考慮する必要があります。以下では、選び方のポイントについて詳しく解説します。

4.1 セキュリティレベル

まず最も重要なのはセキュリティレベルです。マルチシグウォレットの最大のメリットは、秘密鍵を複数に分散させることで一部の鍵が盗まれても資産が失われない仕組みにあります。ただし、それでもウォレットごとにセキュリティの差があるため、以下の要素を確認しましょう。

セキュリティ機能 確認ポイント
2FA(二段階認証) ログイン時に追加の認証ステップがあるかを確認
バックアップ機能 秘密鍵のバックアップとリカバリ機能が用意されているか
オープンソース コードがオープンソースで公開され、専門家によるレビューが行われているか

4.2 使いやすさ

次に考慮すべきは使いやすさです。日常的に利用する場合、あまりにも複雑な操作が必要なウォレットはおすすめできません。特に初心者の方は以下の点に注目してください。

  • インターフェースのデザインが直感的で分かりやすいこと
  • 設定手順が簡単で明確なこと
  • サポートが充実していること(FAQページやカスタマーサポート)

たとえば、LedgerやTrezorなどの有名なハードウェアウォレットは、専用アプリを提供しており、視覚的に簡単な操作画面を提供しています。

4.3 対応通貨

使用を想定している暗号資産が、マルチシグウォレットで対応しているかを確認しましょう。特に複数の通貨を保有している場合は、統一して管理できるウォレットを選ぶと便利です。

現在、多くのマルチシグウォレットでは主要な暗号資産であるビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、およびUSDT(テザー)などに対応しています。事前に公式サイトやホワイトペーパーを確認することが重要です。情報はLedger公式サイト、またはTrezor公式サイトで確認することができます。

4.4 手数料

最後に確認すべき項目は手数料です。マルチシグウォレットによっては、利用する際に手数料が発生する場合があります。

一般的に手数料は以下のようなポイントで発生します。

  • ウォレット開発者が提供する特定の機能の利用料金
  • トランザクションを実行する際のネットワーク手数料(特にイーサリアムブロックチェーンにおける「ガス代」)
  • プラットフォームによって設定される固定費

無料のウォレットサービスを提供しているものもありますが、セキュリティや機能性が犠牲になっていないかを慎重に判断する必要があります。料金体系については公式ページを訪れるなどして事前に詳しく調べておきましょう。

以上の項目を考慮することで、自身のニーズに合った最適なマルチシグウォレットを選ぶことができます。

5. マルチシグウォレットの利用シーン

5.1 企業の資産管理

企業においてマルチシグウォレットは、特に資産管理において非常に重要な役割を果たします。複数の秘密鍵を必要とする仕組みにより、単一の担当者による不正アクセスや内部不正を防止します。これは、企業として透明性を保ちながら、大規模な取引を安全に進めるために適しています。

例えば、企業の経理部門で使われる場合、CFOやCEO、監査部門など複数のメンバーの承認が必要な設定にすることで、特定のメンバーが単独で資産を動かせない仕組みを構築します。こうした設定は、資金管理のリスクを大幅に減らし、内部監査の観点からも有効です。

さらに、国内外で展開する企業が多通貨ウォレットとして導入する場合にも、マルチシグウォレットは強力なセキュリティを提供します。この仕組みは、不正アクセス防止と共に、分散型チームでの意思決定を促進するツールとしても優れています。詳しくはビットコイン日本の記事をご覧ください。

5.2 DAO(分散型自律組織)

DAO(分散型自律組織)は、ブロックチェーン技術を基盤にして分散的に運営される組織です。この組織形態では、意思決定における透明性とセキュリティが求められるため、マルチシグウォレットが理想的な選択となります。

例えば、DAOでの資金運用やプロポーザル(提案)の承認プロセスでは、多くのメンバーの賛同を得る仕組みが必要です。この場合、マルチシグウォレットを利用することで、複数のメンバーが秘密鍵を持つ形にし、一定数以上の署名がないと資金を動かせないように設定することが可能です。

この運用方法は、ガバナンスの透明性を確保するとともに、ハッキングや個人の不正操作に対する優れた耐性を提供します。DAOが利用するウォレットについてさらに知りたい方は、コインポストの記事がおすすめです。

5.3 個人資産の高度なセキュリティ対策

個人で大量の暗号資産を保有する場合、マルチシグウォレットを利用することで、資産のセキュリティを大幅に向上させることができます。単一の秘密鍵を紛失した場合でも、他の鍵が残存していれば資産がロックされることはありません。

例えば、家族で暗号通貨を共同で管理する場合、各メンバーに秘密鍵を分担して持たせることで、資産を共同で安全に管理することが可能です。また、自分自身で複数のデバイスに秘密鍵を分けて保管する形にすると、物理的およびデジタル的なリスクに対して耐性を持つことができます。

さらに、ハードウェアウォレットとの併用により、オフラインでの堅牢な保管も実現可能。これにより、リモート攻撃を防ぎつつ、必要時には複数の本人確認によって資産が解放される仕組みが動作します。個人での導入手順や具体的な事例については、CoinDesk Japanのガイドをご参照ください。

6. よくある質問

6.1 マルチシグウォレットは完全に安全ですか?

マルチシグウォレットは一般的な単一署名(シングルシグ)ウォレットよりも高いセキュリティを提供しますが、それでも完全に安全とは言い切れません。例えば、次のようなリスクが存在します:

リスク要因 具体例
設定ミス 共有者全員が適切に秘密鍵を保管していない場合、全体のセキュリティが脅かされる可能性があります。
秘密鍵の紛失 必要な署名数が満たせなくなることで、資産へのアクセスが失われるケースがあります。
システムの脆弱性 使用しているソフトウェアやハードウェアの脆弱性を狙った攻撃が発生する可能性があります。

そのため、マルチシグウォレットを利用する際には、技術的な理解を深めるとともに信頼できるプラットフォームを選ぶことが非常に重要です。たとえば、大手の「Trezor」や「Ledger」といった製品は、セキュリティが高いと評価されています。

6.2 秘密鍵を紛失した場合の対処法は?

マルチシグウォレットの場合、秘密鍵を紛失しても複数の署名者で残りの鍵が確保されている限り、資産へのアクセスは可能です。具体的には、以下のような対処が挙げられます:

  1. 他の署名者に助けを依頼する:残りの秘密鍵が全て無事であれば、規定通りの署名数が揃えばトランザクションを実行できます。
  2. 設定を再変更する:一部のマルチシグウォレットは、事前にリカバリー用の手続き(例:新しい鍵の追加や署名者の変更)を設定しておくことで対応可能です。

ただし、残りの鍵が所定数以下になった場合、通常の手段でこの問題を解決するのは困難です。秘密鍵のバックアップを十分に取ること、また信頼できる署名者を慎重に選ぶことが重要です。バックアップには、紙のウォレットや暗号化されたUSBデバイスを利用するのが一般的です。詳細な情報は、「Krakenの公式ガイド」をご参照ください。

6.3 マルチシグウォレットの設定方法は?

マルチシグウォレットを設定する方法は使用するプラットフォームによって異なりますが、基本的な手順は以下の通りです:

  1. ウォレットやサービスの選択:マルチシグ対応のウォレット(例:Electrum、BitGo、Ledgerなど)を選択します。
  2. 設定時の署名数を決定:秘密鍵を共有する人数と、そのうち何人が署名を行う必要があるか(例:3人中2人など)を決めます。
  3. 秘密鍵を生成:各ユーザーが秘密鍵をそれぞれ生成し、安全に保管します。
  4. ウォレットを共有:全員がマルチシグ設定に基づくウォレットにアクセス可能となるよう設定を行います。
  5. テストトランザクション:実際の運用前にテストを行い、問題がないか確認します。

詳細な手順や具体的な注意点については、「Blockstream」の公式ドキュメントなど信頼できる情報源を参考にしましょう。特に、オフラインの環境での設定やバックアップの取得は必ず行うようにしてください。これによりトラブル発生時のリスクを最小限に抑えることができます。

7. まとめ

マルチシグウォレットは、複数の秘密鍵を必要とする仕組みで、不正アクセスやハッキングなどから資産を強力に保護できるセキュリティ対策です。そのメリットとして、企業の資産管理や個人における高度なセキュリティ強化に役立つことが挙げられます。ただし、秘密鍵を紛失した際のリスクや、設定や運用における煩雑さがデメリットとなる可能性があるため、用途や目的に応じて適切なウォレットを選ぶことが重要です。特に、LedgerやTrezorなどのハードウェアウォレットは高いセキュリティを提供するとして注目されています。セキュリティと使いやすさを兼ね備えたウォレットを選び、安心して資産管理を行いましょう。

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